追憶の夜想曲

『追憶の夜想曲』(講談社文庫)は、中山七里による「御子柴礼司」シリーズ第2作で、悪徳弁護士・御子柴が過去の罪と向き合いながら、ある殺人事件の真相を暴いていく法廷ミステリーです。


📘 基本情報

  • 著者:中山七里
  • シリーズ:御子柴礼司シリーズ第2作
  • ジャンル:法廷ミステリー/心理サスペンス
  • 主な舞台:控訴審法廷

🧩 あらすじと事件概要(ネタバレあり)

主人公:御子柴礼司

  • 少年時代に凶悪事件を起こし、現在は「悪徳弁護士」として名を馳せる。
  • 金持ちの依頼しか受けず、懲戒請求が絶えない。
  • 今回は異例にも、金にならない事件の弁護を自ら引き受ける。

被告人:津田亜季子

  • 夫・津田伸吾をカッターナイフで刺殺した罪で起訴され、控訴審に臨む。
  • 初公判では殺害を認めていたが、御子柴は無罪を主張。

⚖️ 法廷での攻防

検事:岬恭平

  • 御子柴と因縁のある検事。
  • 御子柴の過去を知る数少ない人物。

弁護戦略

  • 御子柴は亜季子の過去を徹底的に調査。
  • 亜季子が先端恐怖症であることを突き止める。
    • 尖ったものを見ると身体が硬直し、動けなくなる。
    • 凶器がカッターナイフである以上、犯行は不可能。

🧠 真相とどんでん返し

亜季子の隠された過去

  • 亜季子は、御子柴が少年時代に犯した殺人事件の被害者遺族だった。
  • 御子柴は贖罪のため、彼女の弁護を引き受けた。

真犯人

  • 実際に津田伸吾を殺したのは、亜季子の娘・美雪
  • 亜季子は娘をかばい、自ら罪をかぶっていた。

🎭 テーマと読後感

要素内容
贖罪御子柴が過去の罪と向き合い、被害者遺族を救おうとする。
母性亜季子が娘を守るために自己犠牲を選ぶ。
法廷劇岬検事との緊迫した対決、論理と感情のぶつかり合い。
どんでん返し先端恐怖症による無罪証明と真犯人の告白。

📝 総評

『追憶の夜想曲』は、御子柴の人間性と過去が深く掘り下げられ、シリーズの転機となる一作です。法廷ミステリーとしての緻密な構成と、心理描写の巧みさが光ります。タイトルの「夜想曲(ノクターン)」は、御子柴の内面に響く追憶と贖罪の旋律を象徴しています。