祈りの幕が下りる時

『祈りの幕が下りる時』(講談社文庫)は、東野圭吾による加賀恭一郎シリーズの第10作であり、シリーズ最大の謎——加賀の母の失踪と死の真相——が明かされる感動的なミステリーです。


🧩 物語の概要

  • 著者:東野圭吾
  • ジャンル:警察ミステリー/人間ドラマ
  • 舞台:東京・日本橋周辺
  • 主な登場人物
    • 加賀恭一郎:警視庁捜査一課の刑事。剣道の達人。
    • 松宮脩平:加賀の従弟で同僚刑事。
    • 浅居博美:舞台演出家。事件の鍵を握る人物。
    • 田島百合子:加賀の母。過去に家族を捨てた女性。
    • 越川睦夫(綿部俊一):百合子の恋人。事件の被害者。

🔍 あらすじ(ネタバレあり)

二つの殺人事件

  • 事件①:明治座近くのアパートで女性・押谷道子が絞殺される。部屋の住人・越川睦夫は行方不明。
  • 事件②:新小岩の河川敷で焼死体が発見される。当初ホームレスとされたが、DNA鑑定で越川と判明。

加賀の母・百合子の過去

百合子は加賀が幼い頃に家を出て失踪。仙台でスナック勤務後、綿部俊一と交際。孤独の中で亡くなり、遺品の中に「12の橋の名前」が記されたメモが残されていた。

橋の暗号

メモには東京・日本橋周辺の12の橋の名前が月ごとに記されていた。これは百合子が加賀に会いたい一心で、加賀の勤務する日本橋署周辺で「橋洗い」イベントに通っていた証だった。

浅居博美の秘密

博美は道子と接点があり、母親の存在を否定していたが、実は身元不明の女性が彼女の母だった。博美は母を憎み、道子が母の存在を暴こうとしたため殺害。越川も口封じのため殺害。


🎭 クライマックスと結末

  • 加賀は事件の真相を突き止め、博美を逮捕。
  • 百合子の死の真相と、加賀への「祈り」が明かされる。
  • 加賀は母の孤独と愛情を知り、涙する。
  • タイトル「祈りの幕が下りる時」は、母の祈りと加賀の心の幕が閉じる瞬間を象徴。

🧠 テーマと構造

テーマ内容
母と子の断絶と再生加賀と母の関係が物語の核。
憎しみと赦し博美の母への憎悪と加賀の赦しの対比。
過去との対峙加賀が母の過去を知ることで自らを見つめ直す。
日本橋の象徴性橋は人と人を繋ぐ象徴。母の祈りの場所でもある。

🏆 評価と受賞歴

  • 第48回吉川英治文学賞受賞
  • 加賀恭一郎シリーズの集大成的作品
  • 映画化もされ、阿部寛主演で高評価を得た