仮面山荘殺人事件

『仮面山荘殺人事件』(講談社文庫)は、東野圭吾による一冊完結の長編ミステリーで、短編集ではなく単独作品です。そのため、収録作品はこの一作のみです。


🏡 作品概要

  • 著者:東野圭吾
  • 初出:1990年徳間書店より刊行、1995年に講談社文庫版として再収録
  • ジャンル:本格ミステリー、密室殺人、どんでん返し

🧩 あらすじ(ネタバレあり)

序盤:山荘に集まる8人

湖畔の別荘に、婚約者を事故で亡くした主人公・西田が、彼女の親族や友人ら7人を招いて「偲ぶ会」を開く。集まったのは、彼女の父、妹、友人、元恋人など複雑な人間関係を持つ面々。

中盤:銀行強盗の乱入

突然、逃亡中の銀行強盗二人組が山荘に侵入し、全員を監禁。外部との連絡は絶たれ、山荘は完全に孤立する。だが、強盗たちは殺人を犯すことなく、ただ逃げ道を探している様子。

殺人事件発生

その最中、参加者の一人が殺される。状況からして、銀行強盗が犯人ではありえない。つまり、犯人はこの中にいる。疑心暗鬼が広がり、互いに疑い合う展開へ。

終盤:仮面の真実

実はこの「偲ぶ会」は、主人公・西田が仕組んだ“舞台”だった。彼は婚約者の死が事故ではなく殺人だと確信しており、真犯人をあぶり出すために、偽の強盗事件を演出していたのだ。強盗役の二人は俳優で、全ては計画されたものだった。

真犯人の動機と結末

婚約者を殺したのは、彼女の元恋人。嫉妬と執着が動機だった。西田の仕掛けた「仮面劇」によって、犯人は自らの罪を暴かれ、事件は解決へと向かう。


🎭 テーマと特徴

  • 仮面=偽りの顔:登場人物全員が何かを隠している。表向きの顔と本心のギャップが物語の鍵。
  • 舞台劇的構造:事件そのものが“演出”であり、読者も登場人物も騙される構造。
  • どんでん返し:真相が明かされる瞬間の衝撃は、東野圭吾作品の中でも屈指。