七人の中にいる

『七人の中にいる』(今邑彩・中公文庫)は、1994年に刊行された本格サスペンスミステリーで、密室的状況と過去の犯罪が絡み合う緊迫感のある物語です。


🏡 あらすじ(ネタバレあり)

舞台は軽井沢のペンション。オーナーの晶子のもとに届いた一通の脅迫状が物語の発端です。

「あなたの罪は許されない。復讐は始まった」

この手紙は、21年前に晶子が関与した医者一家殺害事件の生存者からのものと思われます。事件は時効を迎えているものの、晶子はかつての仲間たちをペンションに招待し、真相を探ろうとします。

ペンションに集まったのは晶子を含めて7人。その中に、復讐を企てる人物がいるとされ、疑心暗鬼が広がっていきます。


🧩 登場人物と関係性

登場人物役割・特徴
晶子ペンションオーナー。21年前の事件の加担者。現在は妊娠中。
佐竹元刑事。事件の真相を追う。
葛西一行21年前の事件の生存者。復讐者の可能性がある。
宿泊客たちかつての事件関係者。誰が復讐者なのか分からない。

🔍 ストーリーの構成と展開

物語は二重構造で進行します。

  1. ペンション内のサスペンス劇場
    晶子の視点で、宿泊客たちの言動から犯人を探る。誰もが怪しく、誰もが嘘をついているように見える。

  2. 元刑事・佐竹の調査パート
    外部から事件の関係者を洗い出し、ペンションの状況と照らし合わせていく。

この二つの視点が交差することで、読者は徐々に真相に近づいていきます。


🧨 真相と結末(完全ネタバレ)

  • 21年前の事件は、晶子を含む若者たちによる強盗殺人だった。
  • 事件の生存者・葛西一行は、復讐のためにペンションに紛れ込んでいた。
  • しかし、復讐者は一人ではなく、複数の人物がそれぞれの思惑で動いていた
  • 最終的に、晶子は自らの罪と向き合い、家族を守るためにある決断を下す。
  • 犯人は読者の予想を裏切る形で明かされ、人間の業と赦しがテーマとして浮かび上がる。

🎭 テーマと読後感

  • 罪と時効:法的には許されても、心の中では終わっていない。
  • 疑心暗鬼と人間関係:密室状況での心理描写が秀逸。
  • 母性と贖罪:妊娠中の晶子が命を守ろうとする姿が印象的。

昭和の2時間ドラマ的な雰囲気もありつつ、クリスティ的な構成美も感じられる作品です。