『11文字の殺人』(光文社文庫)は、東野圭吾による初期の本格ミステリー作品で、女流推理作家が主人公の連続殺人事件を描いた長編小説です。タイトルの「11文字」が物語の鍵を握る重要な要素となっています。
📘 基本情報
- 著者:東野圭吾
- 刊行:1987年(カッパ・ノベルス)、1990年に光文社文庫化
- ジャンル:本格ミステリー/サスペンス
- 構成:1冊完結の長編小説(短編集ではありません)
🧩 あらすじ(ネタバレあり)
主人公と事件の発端
- 主人公は「私」と語られる女流推理作家。名前は明かされない。
- 彼女の恋人・川津雅之(フリーライター)が何者かに殺害される。
- 川津は死の直前、「狙われている」と怯えていた。
- 遺品の中から重要な資料が盗まれていた。
編集者・萩尾冬子との調査
- 主人公は親友であり編集者の萩尾冬子とともに、川津の死の真相を追う。
- 川津が調査していたのは、無人島で起きたある事故。
- その事故に関係する人物たちが次々と殺されていく。
無人島の事故の真相
- 数年前、無人島で若者たちがキャンプ中に1人が死亡する事故が起きていた。
- 事故は殺人だった可能性があり、川津はその真相を追っていた。
- 事故に関係した人物たちが、川津の死後に次々と殺害される。
11文字の意味
- 川津が残した手がかりは「11文字の言葉」。
- それは、事故の真相と犯人を示す暗号のような言葉。
- 主人公はその「11文字」を解読し、犯人にたどり着く。
犯人と動機
- 犯人は、無人島の事故で殺された人物の兄。
- 事故を「事故」として処理されたことに怒り、関係者への復讐を開始。
- 川津はその復讐計画を知り、殺された。
結末
- 主人公は「11文字の殺人」の意味を突き止め、犯人を追い詰める。
- 犯人は最後に自ら命を絶つ。
- 主人公は恋人の死と向き合いながら、事件を小説として書き上げる。
🎭 作品の特徴とテーマ
要素 | 内容 |
---|---|
語り手 | 一人称「私」による語り。読者を巻き込む構成。 |
構成 | 恋人の死→過去の事故→連続殺人→暗号解読という多層構造。 |
テーマ | 真実の追求、復讐、愛と喪失。 |
トリック | 「11文字」の暗号と、過去の事件とのリンク。 |
📝 総評
『11文字の殺人』は、東野圭吾の初期作品ながら、本格ミステリーの醍醐味とサスペンスの緊張感が融合した力作です。後の代表作『白夜行』『容疑者Xの献身』にも通じる「過去の罪と現在の事件の交錯」が見られます。