ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人

『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』(光文社文庫)は、東野圭吾による「ブラック・ショーマン」シリーズの第1作で、元マジシャンの叔父が殺人事件の謎を解く異色の本格ミステリーです。


📘 基本情報

  • 著者:東野圭吾
  • 刊行:2023年11月(光文社文庫)
  • ジャンル:本格ミステリー/社会派サスペンス
  • シリーズ:ブラック・ショーマンシリーズ第1作
  • 主人公:神尾真世(かみお まよ)
  • 探偵役:神尾武史(叔父/元マジシャン)

🧩 あらすじ(ネタバレあり)

事件の発端

  • 主人公・神尾真世は、結婚準備中の建築会社勤務の女性。
  • 故郷の町で父・神尾英一(元中学教師)が殺害される。
  • 英一は生徒から慕われていた人物で、同窓会の企画中だった。
  • 真世は帰省し、事件の真相を探ることになる。

叔父・神尾武史の登場

  • 英一の弟である武史は、かつてアメリカで活躍したマジシャン。
  • 現在はバーを経営しながら、独自の推理力と手品の技術で事件に挑む。
  • 警察を信用せず、自ら犯人を見つけると宣言。

🔍 事件の構造と真相

二重構造の事件

  1. 英一殺害事件:町の中学教師が殺された事件。
  2. 町おこしプロジェクトの闇:同級生たちが進める「幻脳ラビリンス」関連の利権と対立。

関係者たち

  • 針宮克樹:漫画『幻脳ラビリンス』の作者。中学時代はいじめられていた。
  • 柏木広大:地元建築会社副社長。町おこしの中心人物。
  • 九重梨々香:広告代理店勤務。町おこしのマネージャー。
  • 津久見直也:故人。中学時代に白血病で死亡。事件の鍵を握る人物。
  • 原口浩平:酒屋店主。事件の第一発見者。
  • 池永良輔:被害者の教え子。桃子の夫。

真相(ネタバレ)

  • 英一は、町おこしプロジェクトに絡む不正を知ってしまった。
  • その情報を暴露しようとして殺された。
  • 犯人は、町おこしに多額の資金を投じた人物の関係者で、プロジェクトの失敗を恐れて口封じを図った。
  • 武史はマジシャンの技術(盗聴・暗証番号の読み取り・心理誘導)を駆使して真相に迫る。
  • 最終的に、事件と町おこしの利権が見事に絡み合い、真世と武史が犯人を突き止める。

🎭 作品の魅力とテーマ

要素内容
探偵役元マジシャンという異色のキャラクターが鮮烈。
舞台設定コロナ禍の地方都市。観光地の衰退と再生。
社会性地方創生、同級生の格差、過去のいじめなど。
構成殺人事件と町おこしの二重構造が巧みに融合。
読後感爽快な謎解きと、ほろ苦い人間ドラマの余韻。

📝 総評

『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』は、東野圭吾らしい緻密な構成と、ユーモアと社会性を兼ね備えた新機軸のミステリーです。マジシャン探偵・武史のキャラクターが魅力的で、シリーズ化も期待されています。