悪徳の輪舞曲

『悪徳の輪舞曲』(講談社文庫・中山七里)は、悪辣弁護士・御子柴礼司シリーズの第4作で、彼の過去と家族に深く切り込む重厚な法廷ミステリーです。


🧠 あらすじ(ネタバレ込み)

🔪 母の殺人容疑

御子柴礼司のもとに、30年ぶりに妹・梓が現れる。目的は、母・郁美の弁護依頼。郁美は再婚した資産家の夫・成沢拓馬を首吊り自殺に見せかけて殺害した容疑で逮捕されていた。

郁美は容疑を否認するが、他の弁護士は「死体配達人」の母親という理由で依頼を拒否。御子柴は報酬1000万円を条件に弁護を引き受ける。


🧬 遺伝する犯罪性?

御子柴は、郁美の過去を調べる中で、29年前に自殺した父・園部謙造の死にも疑惑があることを知る。郁美は、父も偽装自殺で殺害したのではないかと疑われる。

この二重の殺人疑惑に対し、御子柴は「犯罪気質は遺伝するのか?」という問いに直面する。自らが14歳で殺人を犯した過去と、母の現在の容疑が重なり、彼の心は揺れ動く。


🧩 真相とどんでん返し

裁判では、検察側が郁美の過去の転居歴や周囲からの迫害、保険金目的の動機などを提示。御子柴は冷静に反証を重ねるが、郁美の過去の言動や証拠が不利に働く。

しかし、ラストで明かされるのは、成沢の死には郁美の意図とは異なる「第三者の思惑」が絡んでいたこと。さらに、父の死も郁美の犯行ではなく、家族を守るための苦渋の選択だった可能性が浮上する。


💔 感動の結末

郁美は最後に「あなたが殺人を犯そうが、世間から怪物と言われようが、お父さんとお母さんはあなたのために必死だった」と語る。御子柴は、切り捨てたはずの家族の愛情に触れ、初めて人間らしい感情を見せる。


🎭 テーマと特徴

  • 贖罪と家族の絆:冷徹な御子柴が、家族との再会を通じて人間性を取り戻していく。
  • 犯罪の連鎖:一つの殺人が、家族の人生を狂わせ、さらに新たな犯罪を呼ぶ。
  • 法廷劇の緊張感:検察との攻防、証拠の精査、心理戦が展開される。

この作品は、シリーズの中でも特に御子柴の内面に迫る一作であり、法廷ミステリーとしての緻密さと人間ドラマの深さが融合した傑作です。