『ある閉ざされた雪の山荘で』(講談社文庫)は、東野圭吾による本格ミステリーで、舞台劇の稽古を名目に集められた若者たちが、密室のような状況下で次々と“殺されていく”という、虚構と現実が交錯するサスペンスです。
🏔️ 作品概要
- 著者:東野圭吾
- ジャンル:本格推理/クローズド・サークル/心理サスペンス
- 舞台:乗鞍高原のペンション「四季」
- 登場人物:オーディションに合格した俳優志望の男女7人
🧩 あらすじ(ネタバレあり)
状況設定
- 演出家・東郷陣平の次回作に出演するため、劇団員7人がペンションに集められる。
- 東郷は現地に現れず、代わりに「即興推理劇を演じよ」という手紙が届く。
- 設定上は「豪雪で外界と遮断された山荘」「電話も使えない」「オーナー不在」。
- 実際には雪もなく、電話も使えるが、外部と接触すればオーディションは失格になる。
第1の殺人:笠原温子
- 翌朝、笠原温子が姿を消す。
- 遊戯室に「設定の第二」と題された紙があり、彼女はピアノのそばでヘッドホンのコードで絞殺されたと記されている。
- 他のメンバーは「彼女は殺され役で退場した」と解釈。
第2の殺人:元村由梨江
- 翌日、元村由梨江が自室で死亡。 -「設定の第三」の紙には、鈍器による打撃と絞殺の痕があると記されている。
- 山荘裏で血のついた金属製の一輪挿しが発見され、現実の殺人ではないかという疑念が生まれる。
第3の殺人:田所義雄
- さらに田所義雄が死亡。 -「設定の第四」の紙には、彼が風呂場で感電死したと記されている。
- ここで生存者たちは「これは芝居ではなく本物の殺人だ」と確信する。
🔍 真相とどんでん返し
犯人の正体
- 犯人は久我和幸。
- 彼は東郷の指示を受けた“犯人役”だったが、芝居の枠を超えて本当に殺人を犯していた。
- 久我は過去に自殺した恋人の死に関係した劇団員たちに復讐するため、オーディションを利用して彼らを集めた。
最後のどんでん返し
- 実は久我自身も東郷に騙されていた。
- 東郷は久我の復讐心を利用し、彼が犯人になるよう仕向けていた。
- 久我は自ら命を絶ち、物語は衝撃的な幕切れを迎える。
👤 主な登場人物
名前 | 役割 |
---|---|
久我和幸 | 犯人役。実際に殺人を犯す。 |
笠原温子 | 第1の被害者。絞殺。 |
元村由梨江 | 第2の被害者。撲殺+絞殺。 |
田所義雄 | 第3の被害者。感電死。 |
東郷陣平 | 演出家。事件の黒幕的存在。 |
本多雄一・雨宮京介・中西貴子 | 生存者。事件の真相に迫る。 |
🎭 作品の特徴とテーマ
- 虚構と現実の境界:芝居の中で起こる殺人が、次第に現実のものとなる。
- クローズド・サークル:外界と遮断された山荘での連続殺人。
- 心理戦と推理:犯人役の心理と、他者の推理が交錯する。
- 一度限りの大トリック:読者の認識を覆す終盤の展開。