マスカレード・イブ

『マスカレード・イブ』(集英社文庫)は、東野圭吾による「マスカレード」シリーズ第2作で、前作『マスカレード・ホテル』の前日譚にあたる短編集です。


📚 収録作品一覧とネタバレ解説

① それぞれの仮面

主人公:山岸尚美(ホテル・コルテシア東京のフロントクラーク)

  • 大学時代の元恋人・宮原隆司が宿泊客として現れ、不倫相手・西村美枝子の失踪を尚美に相談。
  • 尚美はホテル内を調査し、美枝子がまだホテルにいると推理。
  • 宮原は実は美枝子の恋人ではなく、元プロ野球選手・大山将弘のマネージャーであり、大山の不倫を隠すために身代わりになっていた。
  • 美枝子(本名:横田園子)は大山と別れ、別の男性と結婚を考えていた。
  • 尚美は園子の仮面を守りつつ、真実を見抜いて対応する。

テーマ:人間関係の仮面、不倫と偽装、ホテルマンの矜持


② ルーキー登場

主人公:新田浩介(警視庁捜査一課の新人刑事)

  • 実業家・田所昇一がホワイトデーの夜に殺害される。
  • 妻・美千代は料理教室を開いており、教室の生徒・横森仁志が犯人として浮上。
  • 実は美千代が横森を巧みに操り、夫を殺させたという真相。
  • 新田はその裏の動機と偽装を見抜き、事件を解決。

テーマ:操られた犯人、表と裏の顔、女性の怖さ


③ 仮面と覆面

主人公:山岸尚美

  • 人気女流作家・タチバナサクラがホテルに宿泊。オタクグループが正体を暴こうとする。
  • 出版社の望月によれば、作家の正体は中年男性・玉村薫。
  • しかし実際の作家は玉村の娘で、父は“覆面”として娘を守っていた。
  • 尚美は作家の仮面を守り、騒動を収める。

テーマ:覆面作家の正体、親子の絆、ホテルマンの機転


④ マスカレード・イブ(表題作)

主人公:新田浩介 & 山岸尚美(初の共演)

  • 大学教授・岡島孝雄が殺害される。容疑者は准教授・南原定之。
  • 南原は京都のホテルにいたと主張するが、実際はホテル・コルテシア大阪に宿泊していた。
  • 山岸尚美は大阪に応援勤務中で、南原の宿泊記録を確認。
  • 事件の真相は「交換殺人」。南原と畑山玲子が互いの殺人を実行し、アリバイを成立させていた。
  • 新田と尚美がそれぞれの立場から真相に迫り、事件を解決。

テーマ:交換殺人、仮面の裏の動機、刑事とホテルマンの連携


🎭 総評とシリーズとの関係

  • 全編を通して「仮面=人が隠す本性」がテーマ。
  • 『マスカレード・ホテル』の前日譚として、新田と尚美の過去が描かれる。
  • 最終話のエピローグでは『マスカレード・ホテル』の事件の発端が示唆される。