『どちらかが彼女を殺した』(講談社文庫)は、東野圭吾による加賀恭一郎シリーズ第3作で、読者に犯人の特定を委ねるという異色の構成が話題の本格ミステリーです。
🧩 あらすじ(ネタバレあり)
序盤:妹の死と兄の疑念
愛知県警の交通課に勤務する和泉康正は、東京で暮らす妹・園子から「裏切られた」と電話を受ける。数日後、園子は自宅マンションで感電死しているのが発見される。部屋には感電装置が仕掛けられており、自殺に見せかけた他殺の可能性が浮上。
康正は警察に任せず、独自に捜査を開始。妹の交友関係から容疑者を二人に絞り込む。
👤 容疑者2人
容疑者 | 関係 | 動機 |
---|---|---|
佃潤一(J) | 園子の元恋人 | 園子を振って親友・佳世子と交際開始。 |
弓場佳世子(カヨコ) | 園子の親友 | 園子から佃を紹介され、略奪した形に。 |
康正は二人に復讐するため、偽情報を流して事件現場に呼び出し、真相を吐かせようとする。
🔍 加賀の推理と決定的証拠
刑事・加賀恭一郎が登場し、康正の工作を見抜いたうえで、冷静に事件を再構成する。
決定的な証拠:睡眠薬の袋と利き手
- 現場には2つの睡眠薬の空袋が残されていた。
- 園子は左利き。
- しかし、袋の破り方は右利きの痕跡だった。
- よって、犯人は右利きの人物。
利き手の判定
- 佃潤一:右利き。ビニールコードの加工痕から判明。
- 弓場佳世子:左利き。康正の前で袋を左手で破った描写あり。
➡︎ 犯人は佃潤一であると推定される。
🎭 作品の特徴とテーマ
- 読者への挑戦状:犯人の名前は最後まで明かされず、読者が推理する構造。
- 心理戦と復讐:兄・康正の執念と加賀の冷静な推理が対照的。
- 伏線と論理:利き手、指紋、行動の矛盾など細かな描写が鍵。
- 文庫版の仕掛け:文庫化に際し、犯人特定に関わるヒントが削除され、袋とじ「推理の手引き」が付属。
📝 補足
- 本作は加賀シリーズの中でも異色の構成で、読者の推理力が試される。
- 犯人の名前が明かされないまま終わるため、読後に再読して伏線を確認する楽しみがある。