『倒産続きの彼女』(宝島社文庫)は、新川帆立による「剣持麗子」シリーズの第2作で、前作『元彼の遺言状』の世界観を引き継ぎつつ、新たな主人公・美馬玉子の視点で描かれる企業ミステリーです。
📘 基本情報
- 著者:新川帆立
- ジャンル:企業ミステリー/リーガルサスペンス
- シリーズ:剣持麗子シリーズ第2作
- 主人公:美馬玉子(弁護士)
- 舞台:老舗アパレル企業「ゴーラム商会」
🧩 あらすじと展開(ネタバレあり)
美馬玉子の任務
弁護士・美馬玉子は、先輩の剣持麗子とともに、倒産寸前のゴーラム商会に関する調査を命じられる。調査対象は経理課の女性社員・近藤まりあ。彼女は過去に勤務した3社すべてが倒産しており、「会社を倒産に導く女」として匿名通報が寄せられていた。
近藤まりあの不審な生活
- SNSには高級ブランド品に囲まれた生活が投稿されている。
- 年収に見合わない消費ぶり。
- ゴーラム商会の経営悪化と、彼女の入社時期が重なる。
玉子と麗子は、まりあが会社の金を横領しているのではないかと疑う。
首切り部屋の殺人事件
調査中、ゴーラム商会の総務課長・只野愛子が社内の「首切り部屋」で喉を切られて死亡しているのが発見される。
- 首切り部屋はリストラ通告に使われる部屋。
- 社内の不満や怨恨が渦巻く場所。
- 殺人事件は社内の闇を象徴する。
事件は警察の捜査に移るが、玉子と麗子は独自に調査を続ける。
真相:倒産の仕掛け人
- ゴーラム商会は、海外企業「ランダール社」との独占販売契約が突然打ち切られたことで経営危機に陥っていた。
- 契約書の自動更新条項が消えていたのは、社内に内通者(スパイ)がいたため。
- 近藤まりあは、ランダール社に協力する見返りに報酬を受け取っていた。
- 彼女は企業を内部から崩壊させる「倒産請負人」だった。
結末とエピローグ
- 只野愛子は、まりあの不正に気づき、告発しようとして殺された。
- 玉子と麗子は、まりあの犯行を暴き、事件を解決。
- 玉子は自分の生き方や価値観を見つめ直し、弁護士としての成長を遂げる。
🎭 作品の魅力とテーマ
要素 | 内容 |
---|---|
主人公交代 | 剣持麗子から美馬玉子へ。視点の変化が新鮮。 |
社会性 | 企業の不正、内部告発、SNSの虚像など現代的テーマ。 |
キャラクター | 玉子の庶民的で等身大な視点が共感を呼ぶ。 |
ミステリー構成 | 倒産と殺人が絡む二重構造。伏線と論理が丁寧。 |