『そして誰もいなくなる』(中公文庫)は、今邑彩による本格ミステリーで、アガサ・クリスティの名作『そして誰もいなくなった』へのオマージュ作品です。名門女子校を舞台に、演劇と現実が交錯する連続殺人事件が描かれます。
📘 基本情報
- 著者:今邑彩
- ジャンル:本格ミステリー/見立て殺人/学園サスペンス
- 刊行:中公文庫
- 舞台:名門女子校「天川学園」
- 構成:一冊完結の長編小説
🧩 あらすじと展開(ネタバレあり)
演劇の悲劇
- 天川学園の七夕祭で、演劇部が『そして誰もいなくなった』を上演。
- マーストン役の生徒・西田エリカが、劇中でウイスキーを飲む場面で本当に服毒死。
- グラスからは青酸の匂いが検出され、殺人事件として捜査開始。
見立て殺人の始まり
- 演劇部部長・江島小雪と顧問・向坂典子が独自に調査を始める。
- その後、劇に出演していた部員が次々と死亡:
- 松木晴美:致死量の睡眠薬で自殺に見せかけた殺害。
- 佐久間みさ:鈍器で後頭部を殴打され死亡。
- いずれも劇中の死因と一致しており、見立て殺人の可能性が濃厚に。
🔍 犯人と動機
犯人の正体
- 小雪と典子は、事件の背景にある人間関係と動機を探る。
- 犯人は演劇部の関係者で、劇の筋書きに沿って殺人を実行。
- 最終的に、犯人は小雪の親友である部員であることが判明。
- 過去のいじめや嫉妬、演劇部内の人間関係が動機に。
クライマックス
- 小雪と典子は、河口湖の別荘に犯人を呼び出し、証拠を得るための罠を仕掛ける。
- 犯人は自白し、事件は解決へ。
- しかし、真の黒幕は別に存在していたことが明かされ、さらにどんでん返しが続く。
🎭 作品の特徴とテーマ
要素 | 内容 |
---|---|
オマージュ | クリスティ作品を劇中劇として引用し、現実の殺人とリンク。 |
構成 | 演劇と現実の二重構造。見立て殺人の緊張感。 |
キャラクター | 小雪と典子のコンビが事件を追う。 |
どんでん返し | 犯人判明後も二転三転する展開。 |
テーマ | 表と裏の顔、友情と裏切り、演技と現実の境界。 |
📝 総評
『そして誰もいなくなる』は、単なるオマージュにとどまらず、演劇と現実が交錯する巧妙な構成と、予測不能な展開が魅力の一作です。犯人判明後も物語が続き、読者の予想を裏切る展開が待っています。ミステリ好きには特におすすめの作品です。