アルキメデスは手を汚さない

『アルキメデスは手を汚さない』(講談社文庫)は、小峰元による1973年の江戸川乱歩賞受賞作で、昭和の学園を舞台にした青春ミステリーです。


🧩 あらすじ(ネタバレあり)

序盤:女子高生の死

高校2年生の柴本美雪が中絶手術に失敗して死亡。彼女は死の直前に「アルキメデス」という謎の言葉を残していた。父親は娘の死の真相を探るため、学校や関係者を調査し始める。

中盤:学園内の混乱

美雪の死後、学園では以下のような事件が続発する:

  • 毒殺未遂事件:教室で生徒が倒れる。
  • 行方不明事件:別の生徒が失踪。
  • 暴力事件:他校生との喧嘩など。

これらの事件には、同級生の柳生隆保が関わっているように見える。彼は美雪と親しかったが、事件後は不可解な行動をとる。

警察の捜査と父親の追及

警察(野村刑事)も動き出すが、証拠が乏しく捜査は難航。美雪の父は、娘が誰の子を身ごもっていたのかを突き止めようとするが、周囲は沈黙を守る。

終盤:真相の解明

  • 美雪の妊娠相手は柳生隆保だった。
  • 柳生は美雪を見捨て、彼女は絶望して中絶を選ぶが、失敗して死亡。
  • 柳生の家庭にも問題があり、母親が彼の罪を隠そうとする。
  • 毒殺未遂事件は、柳生の姉が関与していた可能性も示唆される。

「アルキメデス」という言葉は、美雪が最後に残したメッセージであり、“自分では手を汚さずに他人を動かす者”という意味で、柳生を暗に指していた。


👤 登場人物

名前役割
柴本美雪被害者。中絶失敗で死亡。
柳生隆保美雪の恋人。事件の中心人物。
野村刑事捜査担当。
美雪の父娘の死の真相を追う。
柳生の母・姉家庭の闇を抱える。

🎭 作品の特徴とテーマ

  • 世代間の断絶:大人と若者の価値観のズレが根底にある。
  • 青春の残酷さ:若者の無責任さと衝動が悲劇を生む。
  • タイトルの意味:「アルキメデス」は、手を汚さずに他人を操る者の象徴。
  • 社会性:中絶、家庭問題、教育の限界など現代にも通じるテーマ。

🏆 評価と影響

  • 第19回江戸川乱歩賞受賞作。
  • 東野圭吾が高校時代に読んで衝撃を受け、小説家を志すきっかけとなった作品としても知られる。