『嘘をもうひとつだけ』(講談社文庫)は、東野圭吾による加賀恭一郎シリーズの短編集で、5編のミステリーが収録されています。それぞれの作品は「嘘」をテーマに、日常の中に潜む犯罪と人間の心理を描いています。
📚 収録作品一覧とネタバレあらすじ
1. 嘘をもうひとつだけ
- 初出:『イン★ポケット』1999年5月号
- あらすじ:バレエ団の事務員がマンションのバルコニーから転落死。自殺とされるが、加賀は元プリマ・バレリーナの証言に違和感を覚える。
- ネタバレ:元バレリーナが事務員の過去の不正を知り、口封じのために突き落とした。彼女は「嘘をついていない」と主張するが、加賀は「嘘をもうひとつだけ」見抜く。
2. 冷たい灼熱
- 初出:『小説現代』1996年10月号
- あらすじ:建設会社の社員が熱中症で死亡。現場の管理者は事故と主張するが、加賀は現場の状況に不自然さを感じる。
- ネタバレ:管理者が被害者に恨みを持ち、わざと水分補給を妨げて死に至らしめた。事故に見せかけた計画的な殺人だった。
3. 第二の希望
- 初出:『小説現代』1997年6月号
- あらすじ:病院で働く女性が薬物中毒で死亡。彼女は過去に自殺未遂歴があり、再発と見られていた。
- ネタバレ:女性は恋人に裏切られ、復讐のために自殺を装って彼を巻き込もうとした。だが、薬の量を誤り本当に死亡してしまう。
4. 狂った計算
- 初出:『小説現代』1997年10月号
- あらすじ:税理士が顧客の資産を不正に操作していたことが発覚。顧客の一人が殺害され、加賀が捜査に乗り出す。
- ネタバレ:税理士は顧客の資産を横領していたが、殺人は別の人物によるもの。犯人は被害者の妻で、夫の裏切りに耐えかねて犯行に及んだ。
5. 友の助言
- 初出:『小説現代』1999年7月号
- あらすじ:大学教授が自宅で死亡。親友の助言に従って行動していたことが判明する。
- ネタバレ:親友は教授の研究成果を盗もうとしていた。助言は教授を追い詰めるための策略で、死は間接的な殺人だった。
👤 主な登場人物
名前 | 役割 |
---|---|
加賀恭一郎 | 警視庁捜査一課の刑事。冷静な観察力と洞察力で事件を解決。 |
各話の容疑者・被害者 | 一般市民や専門職など、日常に潜む加害者たち。 |
🎭 作品の特徴とテーマ
- 嘘と真実:人はなぜ嘘をつくのか、そしてその嘘がどんな悲劇を生むのか。
- 日常の犯罪:派手な殺人ではなく、身近な人間関係の中で起こる事件。
- 加賀の推理:論理と人間心理を融合させた静かな捜査スタイル。