淋しい狩人

『淋しい狩人』(新潮文庫)は、宮部みゆきによる連作短編集で、東京下町の古書店「田辺書店」を舞台に、店主イワさんと孫の稔が様々な事件に関わっていく人情ミステリーです。


📚 収録作品とネタバレあらすじ

1. 六月は名ばかりの月

  • あらすじ:銀行員の佐々木鞠子が、以前ストーカーに遭った件で田辺書店を訪れる。イワさんと稔が助けた過去があり、犯人の顔を覚えているか尋ねる。
  • ネタバレ:鞠子の姉が関わる宗教団体の教祖が書いた自叙伝が事件の鍵。殺人事件に発展し、犯人はその教祖だった。

2. 黙って逝った

  • あらすじ:永山路也の父・武男が急死。部屋には同じ本が302冊もあり、謎が深まる。
  • ネタバレ:武男は自費出版した本を売るために、車のナンバーを記録して営業していた。凡庸と思っていた父に隠された情熱があった。

3. 詫びない年月

  • あらすじ:荒物屋の柿崎家で幽霊騒ぎ。地下から遺骨が発見される。
  • ネタバレ:遺骨は空襲で亡くなった人のもの。戦争の記憶と現在の子供たちの物語が交錯する。

4. うそつき喇叭

  • あらすじ:小学生が童話『うそつき喇叭』を万引きしようとする。イワさんは彼の身体に痣を見つける。
  • ネタバレ:児童虐待の話。犯人は母親ではなく、意外にも学校の教師だった。

5. 歪んだ鏡

  • あらすじ:由紀子が電車で拾った文庫本に名刺が挟まっていた。名刺の主に会おうとする。
  • ネタバレ:名刺は営業目的で挟まれていた。現実的な話だが、由紀子の行動が肯定的に描かれ、温かい結末に。

6. 淋しい狩人(表題作)

  • あらすじ:失踪した作家・安達和郎の娘・明子が、父の未完の小説『淋しい狩人』を持って田辺書店を訪れる。現実の殺人事件が小説と酷似していた。
  • ネタバレ:犯人は小説の内容を模倣して現実に再現しようとしていた。イワさんと稔が事件の真相に迫り、刑事・樺野と協力して犯人を追い詰める。

🧓 主な登場人物

名前役割
岩永幸吉(イワさん)古書店の店主。元材木問屋勤務。
岩永稔イワさんの孫。高校生。
樺野俊明刑事。イワさんの亡き息子の友人。
安達明子表題作に登場。失踪した作家の娘。

🎭 特徴と魅力

  • 本を巡る人間ドラマ:各話に本が絡み、人生の断片が描かれる。
  • 社会性のあるテーマ:児童虐待、戦争、孤独、家族の断絶など。
  • 温かみのある語り口:陰惨な事件も、イワさんと稔の視点で柔らかく描かれる。