🎬 作品概要
『第三の男』(1949年/英)は、キャロル・リード監督、脚本グレアム・グリーンによるフィルム・ノワールの金字塔。
モノクロ映像とチターの旋律が、荒廃したウィーンの街並みに独特の詩情を与えています。
📝 あらすじ(ネタバレ込み)
- 訪問と衝撃の知らせ
アメリカ人作家ホリー・マーチンスは、旧友ハリー・ライムに呼ばれてウィーンへ。しかし到着すると、ハリーは前日に自動車事故で死亡したと告げられ、葬儀に立ち会うことに。 - 友の汚名と反発
英国軍のキャロウェイ少佐から、ハリーは闇市で粗悪なペニシリンを売り、多くの死者を出した悪党だと聞かされる。信じられないホリーは、真相を探る決意を固める。 - “第三の男”の影
門番の証言から、事故現場にはハリーの仲間クルツ、ポペスクのほかにもう一人=“第三の男”がいたことが判明。 - 生きていたハリー
調査中、街角で死んだはずのハリーと遭遇。彼の死は偽装で、闇取引を続けていたのだと分かる。 - 観覧車での対峙
観覧車の密室で、ハリーは犯罪哲学を語り、ホリーを仲間に誘うが拒否される。 - 決断と追跡
ホリーはアンナ(ハリーの恋人)の釈放と引き換えに、ハリー逮捕に協力。カフェで囮となり、現れたハリーは下水道へ逃走。迷路のような地下での銃撃戦の末、ホリーの手で射殺される。 - ラストシーン
本当の葬儀の後、並木道でアンナを待つホリー。しかし彼女は無言で通り過ぎ、物語は静かに幕を閉じる。
💡 見どころ
- 映像美:斜め構図や強烈な光と影のコントラストが、戦後都市の不安と緊張を映し出す。
- 音楽:アントン・カラスのチター演奏が全編を通して響き、哀愁と皮肉を漂わせる。
- 寓話性:登場人物に名前はあるが、善悪や友情の境界が揺らぐ物語構造が、寓話のような余韻を残す。