ジャッジ 裁かれる判事

概要

「ジャッジ 裁かれる判事」(原題: The Judge, 2014)は、アルフレッド・ヒッチコック…ではなく、デヴィッド・ドブキン監督によるアメリカの法廷・家族ドラマ映画。大都会で勝利至上主義の弁護を続けるハンクが、疎遠だった地元の判事である父ジョセフの“殺人容疑”を機に帰郷し、親子の確執と正義の線引きを法廷で直視していく物語です。主演はロバート・ダウニーJr.とロバート・デュヴァル。


あらすじ(ネタバレあり)

帰郷と確執の再燃

母の訃報で帰郷した敏腕弁護士ハンクは、長年距離を置いてきた父ジョセフ(地元で尊敬を集める判事)と再会するも空気は険悪。そんな中、父がかつて重刑を言い渡した男マーク・ブラックウェルが轢き逃げで死亡、ジョセフ自身が容疑者として逮捕される。

逮捕と弁護の引き受け

若手弁護士ケネディが一度は担当するが押され気味。結局ハンクが渋々父の弁護を引き受ける。事件当夜の記憶が曖昧なジョセフは飲酒を否定する一方、化学療法による記憶障害の兆候が判明。しかし彼は“判事としての体面”を理由に病状の公表を拒む。

裁判の争点

防犯映像や状況証拠が不利に積み上がる一方、被害者ブラックウェルは前科があり、墓地で偶然ジョセフと遭遇した際に故人(ジョセフの妻)を侮辱して挑発していたことが示唆される。ジョセフは「わざとやったのでは」と自責し、ハンクの“勝つための弁護”と父の“矜持”が激しく衝突する。

核心と判決

ハンクは最終的に、父の記憶障害という不利な事実をあえて法廷に晒す決断をし、計画性のない衝動的行為として争点を絞る。評決は故意の殺人ではなく、より軽い「衝動的な殺害(過失ではない)」に相当する有罪。ジョセフには実刑が下る。

その後

服役後、進行する病を理由に恩赦(ないし早期釈放)となったジョセフは帰郷。ハンクと湖で釣りをしながら、かつてない率直な言葉を交わす。やがて父は静かに息を引き取り、ハンクは“法廷で勝つこと”とは別の意味で、父と自分をようやく受け入れていく。


主要人物

  • ハンク・パルマー: 都会の敏腕弁護士。勝つためなら手段を選ばないが、父の弁護を通して“正義”と“矜持”に向き合う。
  • ジョセフ・パルマー: 地元で尊敬される老判事。重い病と記憶障害を抱えつつ、自らの職業倫理に固執し、息子と対立する。
  • グレン・パルマー: ハンクの兄。かつての事故をきっかけに家族間のわだかまりを抱える。
  • C.P.ケネディ: 一度はジョセフの弁護を担当する若手弁護士。検察に押されて辞任。
  • マーク・ブラックウェル: かつてジョセフが重刑判決を言い渡した男。轢き逃げ事件の被害者。

テーマと見どころ

  • 正義と誇りの折り合い: “勝てばいい”弁護と“真実に忠実”でありたい判事の姿勢。その間で、親子は互いの弱さと矛盾を晒し合う。
  • 家族の和解は判決の外で起きる: 法廷は手段にすぎない。湖での短い時間こそが、彼らにとっての救い。
  • 役者の対決: ダウニーJr.の切れ味と、デュヴァルの重み。刺し違えるような父子の応酬は見応え充分。

ひとことで

“裁かれる”のは事件だけじゃない。父の矜持、息子の生き方、そして親子が互いに避け続けてきた年月そのものです。