概要
2020年6月21日にテレビ朝日で放送された単発ドラマスペシャル「スイッチ」は、脚本・坂元裕二、主演・阿部サダヲで、学生時代から続く独特な関係性を持つ刑事・直と保護観察官・円が、被害者の「選択」と人間の判断をめぐる連続不可解死事件に巻き込まれていくミステリー作品です。。
登場人物と関係図(主要)
- 直(刑事)… 阿部サダヲ演。学生時代から円と関わりがある刑事。事件担当で調査を進める人物。
- 円(保護観察官)… 筧谷円(演:松たか子/若年期ほか複数の俳優が若年期を演じる)。直と学生時代に交際歴があり、現在も複雑な縁で結ばれている保護観察官。
- 依子(被害者の関係者)… 星野依子(演:原日出子/若年期演:出口夏希)。直と円の行く先に登場する重要な人物。
- 重藤(被害者)… 重藤啓輔(演:岡部たかし)。円や直と事件で接点ができる人物。
- 鈴木貴司、橋口、八角など事件の周辺人物が複数登場し、被害者それぞれの背景や疑念を深めていく。
(上記のキャスト・役どころは登場の仕方や回想を通じて細かく描かれる)。
物語の骨子と前半の流れ
- 物語は、直が担当する「ミナトミライ連続転落死事件」の現場から始まり、被害者として発見された人物たちの死が、一見すると単独の事故や自殺に見えるが、共通点と不審な点が散見されることから捜査が始まる。
- 円は保護観察官として被害者あるいはその家族と接点を持ち、直とは学生時代からの複雑な過去(交際・別離・再会)が背景にある関係で、捜査と個人的感情が交錯する。
- 被害者側のエピソードとして、飲食店や料理研究家、広告代理店の人物などが登場し、複数の時系列(2017年、2014年、2010年、2005年、2003年など)に渡る未解決事件やトラウマが掘り下げられていく。
主要なネタバレと真相の構造
- 事件群は単独の犯行ではなく、被害者が「選択」を迫られたように見える状況が続く。物語は「人」と「サル(実験や判断のメタファー)」の比較や、人の選択確率をめぐる思想的なモチーフを織り込みながら進行する。
- 円の過去と直の関係が事件の核心に深く絡む。円はかつて直や別の人物と交際歴があり、彼女を取り巻く“助けを求めたが警察が動かなかった”という過去の出来事が、現在の一連の出来事につながる伏線となる。
- 物語のクライマックスで、意外な人物(円自身や周辺の一見関係ないと思われた人物)が「暗殺者」あるいは事件を引き起こした主体として浮かび上がる。最終的に謎の“暗殺者”が、円であった、あるいは円に深く関係する人物であったというショッキングな明かしがあり、事件の「選択」と「責任」「正義」の問いが強調される。
- 直は真相を追い詰める過程で、円の過去の行動や動機に直面し、刑事としての職務感情と、個人的な感情の衝突に直面する。
結末とテーマ的解釈
- 終盤では「選択の重み」と「誰が誰を助けるのか」「正義とは何か」という倫理的問いが提示され、登場人物たちの過去の決断が現在の死や被害につながっていたことが明らかになる。
- 結末は完全なハッピーエンドではなく、人間の判断の曖昧さや偶然性、連鎖する責任が残る余韻を残す形で終わる。観る者に「誰がスイッチを入れたのか」「誰が押すべきだったのか」を問う作りになっている。
視聴のポイントと補足情報
- 脚本は坂元裕二らしい人間の心理や関係性の機微を掘り下げる文体で、ミステリーとしてのトリックだけでなく人物内面の描写に重きがある点に注目してください。
- 断片的な過去の事件をつなぎ合わせることで見えてくる「一点の真実」と、それを取り巻く倫理的ジレンマが本作の核です。
- 放送は21:00 – 23:04の特番枠でのオンエアでした。