映画『タクシードライバー』(1976年、監督:マーティン・スコセッシ、主演:ロバート・デ・ニーロ)は、孤独と狂気に満ちた男の内面を描いたアメリカン・ニューシネマの傑作です。以下、完全ネタバレありで詳細に解説します。
🧠 登場人物と背景
トラヴィス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)
ベトナム戦争帰還兵。不眠症に悩み、夜間のタクシードライバーとして働く。社会に対する嫌悪と孤独感を募らせていく。ベッツィ(シビル・シェパード)
大統領候補パランタインの選挙スタッフ。トラヴィスが一目惚れする女性。アイリス(ジョディ・フォスター)
13歳の家出少女。売春婦として働かされている。スポーツ(ハーヴェイ・カイテル)
アイリスを管理するポン引き。
🕯️ あらすじ(詳細・ネタバレ)
第1幕:孤独な夜の始まり
- トラヴィスはニューヨークの夜をタクシーで流す。客は麻薬中毒者、売春婦、暴力的な男ばかり。
- 彼は日記に社会への嫌悪と怒りを綴り始める。「この街のゴミを一掃すべきだ」と考えるようになる。
第2幕:ベッツィとの出会いと破綻
- 選挙事務所で働くベッツィに惹かれ、声をかけてデートに成功。
- しかし、トラヴィスは彼女をポルノ映画館に連れて行ってしまい、ベッツィは激怒して去る。
- その後も彼女に執着し、事務所に押しかけて罵倒。完全に拒絶される。
第3幕:狂気への加速
- トラヴィスは銃を購入し、肉体改造を始める。鏡に向かって「You talkin’ to me?」と繰り返す名シーンが登場。
- 大統領候補パランタインの暗殺を計画するが、警備に阻まれて失敗。
第4幕:アイリスとの邂逅
- トラヴィスのタクシーにアイリスが乗り込むが、すぐにスポーツに連れ戻される。
- 彼女を救いたいと考え、客として接触。家に帰るよう説得するが、アイリスは拒否。
- トラヴィスは「この街の腐敗を自分が浄化する」と決意。
🔫 クライマックス:血の浄化
- モヒカン頭に刈り上げ、銃を仕込み、アイリスのいる売春宿へ突入。
- スポーツを射殺し、見張りの男たちとも銃撃戦を繰り広げる。
- トラヴィスも重傷を負い、弾切れの銃で自殺を試みるが失敗。警察に取り押さえられる。
📰 結末と余韻
- マスコミはトラヴィスを「少女を救った英雄」として報道。
- アイリスは家族の元へ戻る。
- 数ヶ月後、トラヴィスは再びタクシー運転手として働いている。
- ある日、ベッツィが乗車。彼女は新聞でトラヴィスの活躍を知っていた。
- トラヴィスは笑顔で応じ、料金を受け取らずに去っていく。
🧩 解釈と余韻
- ラストシーンは「妄想オチ」とも言われる。トラヴィスが死んだ後の幻想ではないかという説もある。
- 社会に適応できない男が、暴力によって「英雄」とされる皮肉。
- ベトナム戦争後のアメリカ社会の病理、孤独、暴力、そしてメディアの歪みを鋭く描いている。
この作品は、構造と心理描写に深く関心を持つ方にとって、何度も読み解く価値のある映画です。